読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

思いつき連載 VBA王子 ニューヨークへ行く #5

思いつき連載

前回

vba-belle-equipe.hatenablog.com

登場人物

赤羽健太

主人公

王子友哉

赤羽の同期。営業のエース候補。

川口瑞穂

赤羽の同期。広報課。

浮間船子

赤羽の先輩。

  • 甘いものが好き
  • 辛いものも好き
  • 食べ物は大体好き
北浦和

おかっぱ頭。

#5

 タタタタテテテテッ―タタテテテトテト。
 狭い室内に、キータイプ音が響く。
「そ、そうですか・・・」
「えっ」
「えっ」
 北浦はモニターから目を離し、赤羽をチラッと見た。
「終わり?」
「はい?」
「いやいや。そうですか、で終わりかって訊いてんの」
「どういうことですか?」
 北浦が軽く首を振ると、サラサラの髪の毛がなびく。
「いや、あのさ。君はVBAのことで困ってるわけだ」
「はい」
「で、お願いごとがあってきたわけでしょ」
「はい」
「で、いきなり『だが断る。キリッ』とか言われてさ、それで終わりなわけ?」
「はい」
「はい、じゃなくてさ。もうちょっと頑張ってくれよ」
 赤羽は天を見上げた。天井が近い。
「頑張ると言いますと」
「いやいや、そこを何とか、とかさ。話だけでも、とか、なんかあるだろ」
「あー、なるほど。そういうやつですね」
「そういうやつだよ。君はあれか、サトリ世代とかいうやつか」
「たぶん、違うと思います」

 北浦はチュッパチャップスを口に含み、両手をろくろ回しの形にしながら語り始めた。
VBAというのは、仕事をする人間にとって最も身近なプログラミング言語だ。WordやExcelを使わない職場はほとんどないだろう、たぶん。で、それらのMicrosoft Officeアプリケーションを操るための言語が・・・聞いてるか?」
「はい、聞いてます」
「立ったまま寝てるのかと思った」
「よく言われます」赤羽は頷いた。
「まあ、そういうわけだから。要約すると、今は忙しいから俺は対応できない。そっちで何とかしてくれ、という話だ」
「そういう話だったんですか」
「導入部からは考えられないかもしれないが、話は意外な展開を迎えつつ、そういう方向に向かう予定だったんだ」
「そうでしたか」
「意外な展開というのが何か、気になるか」
「大丈夫です」赤羽は右耳の後ろをポリポリと掻いた。
「あ、今、この人、実は話し相手がほしかったんじゃないか、こんな場所に一人でいるからまあ仕方ないか、とか思っただろう」
「思ってません」
 赤羽は、めんどくさい、と思った。
「まあいいか。で、とにかく俺は、ことわったから」
「はい」
 北浦は右手のひらを上に向け、手首をくいっとやる。
 ブルース・リーかな、と赤羽は思った。
「ことわったんだよ~」
「はい・・・あ、ああ。そこを何とか」
 北浦は腕を組み、ものものしく頷いた。
「まあ、いいだろう。俺がお前にVBAを教えてやる」
「大丈夫です」
「えっ」
「えっ」



- つづく -